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日中韓共通歴史教科書の幻想

〜民主党「友愛」史観の災厄〜

本誌編集部

岡田克也外相は、村山談話(平成7年)について「(アジアに)まだ納得できない人が一定範囲でいることは事実だ。それ以上に言葉よりも行動だ」と述べ、より踏み込んでいく考えを示した。 日中韓の歴史教科書問題では「将来の理想は(日中韓)共通の教科書を作ることだ」と述べ、現行の教科書検定制度に疑問を投げかけた。

歴史認識については「過去に行った戦争で被害を受けた人たちの気持ちは簡単に解決できるものではない」と述べ、村山談話の踏襲だけでは不十分だとの認識を表明。(産経新聞 09.10.8)

大方の懸念通り、鳩山民主党政権が東アジアに傾倒している。岡田外相が、国益や将来的ビジョンのない発言に、マスコミの批判的報道がほぼ皆無というのは、これまでの保守政権に対するそれと比較するとき、二枚舌としか言いようがない。

そもそも、過去に起こった事実は一つであっても、それへの評価や歴史観は、国や民族ごとに異なるのはいうまでもない。それを共通認識にするというのは、いずれかが妥協するということである。むろん、この場合には、「村山談話を言葉だけでなく行動に」ということからしても、中国・韓国の歴史認識を受け入れるということだ。しかし彼国の歴史教育の実情を知ったうえで言っているのだろうか。

◆臥薪嘗胆と「克日」主義

中国の歴史教科書は1990年代に国定教科書から検定制になったが、現在も国家機関である「人民教育出版社」編集『中国歴史』が圧倒的なシェアを占めている。その冒頭の言葉は、「学生に祖国を熱愛し、中国共産党を熱愛し、社会主義事業を熱愛し、4項の基本原則(マルクス・レーニン主義と毛沢東思想、共産党の指導、社会主義思想、プロレタリア独裁)」を重視することを強調しており、その政治性・党派制を隠そうともしていない。(1999年版)。

次に、教科書本文をみてみよう。

歴史の勉強は思想・品位の養成に重要な役割を持っている。祖国の悠久で輝かしい歴史は、私たちの強い愛国の熱情と民族の誇りを高めてくれる。新中国誕生以来、日進月歩で急速に発展してきた歴史は、私たちに中国共産党に従って社会主義の輝ける道を歩む信念を確信させてくれる。(2001年版)

中国旅行をしたことがある方なら、博物館や遺跡の入口に「愛国主義教育基地」と書かれた看板を目にしたことがあるだろう。そこでは、「臥薪嘗胆」を具現化した歴史観が繰り広げられている。「侵略者」「支配者」に虐げられた中国人民の被害の〈哀史〉を、たとえ捏造してでも刷り込んで、愛国心を奮い立たせるのだ。こうした外敵への憎悪や自国の被害を強調した愛国教育など、日本の平和教育者が見たら卒倒するはずだが、日教組の訪中団は嬉々と来館していた。

次に、韓国の歴史教育である。「国史」科目の教科書は長く国定1冊のみであったが、検定教科書も3割程度使われるようになった。しかし、学習指導要領にあたる韓国教育部の通達によれば、「国史はわが民族の正体性を涵養する役割をもつ。すなわち、国史教育はわが民族文化の伝統を確信し、民族史の展開に積極的に参加する精神を育てるのである」(1997年公示)と書かれている。

日本との関係で言えば、古代に「先進文化を伝えてあげた」式の記述は、若干緩和されたというが、「日本文化の形成にわが民族が貢献」したことはかなり強調されて、多く残っている。それは、韓国教育の中で「3国時代」が、「わが民族の積極的な活動に誇りを感じ、民族史に対する自負心をもつ」うえで重視されているからである。

韓国では、倭寇や豊臣秀吉の朝鮮出兵、近代の日韓併合に至るまで、日本からの被害記述が圧倒的な割合を占めているのは周知のことであろう。しかし、これは中国も同じだが、中・朝からの日本侵略についてはまったく言及しないのが約束事となっている。

そもそも、蒙古襲来は、1272年、高麗の忠烈王が元の皇帝フビライに日本侵攻を薦めたことに端を発する。これは高麗・元両国の史料に明記されているので動かない事実だ。

「惟だ彼の日本のみ、未だに聖化を蒙らず。故に詔使を発し、継いで軍容を耀かし、戦艦・兵糧は方に須むる所在り。もしこのこの事を以て臣に委ぬれば、勉めて心力を尽くし、小しく王師を助くるに庶幾からん」(「高麗史」)
「高麗国王請、自造船百五十艘、助征日本」(「元史」)

しかし、韓国「国史」教科書では、このときに起こった国内一部の反乱軍(三別抄)の「対蒙抗争」を取り上げるのみで、日本に侵攻したこと(しかも高麗王みずから日本侵攻を唆した!)には触れていない。みずからの被害記述と比するとき、こうした二重基準は、日本の常識からは相当かけ離れている。なお、日本の教科書にも「三別抄」が現れたのには、さらに驚きを禁じ得ない。

■「自国に誇りを持つか〜日本は最下位」

ほんの一部を紹介しただけだが、こうした両国の「愛国主義」「民族主義」教育を前に、岡田外相のぬるさは、何か戦略的な意図があるのではないかと思わせる。

さらに、先般、発表された日中歴史共同研究の報告によると、「中国国民の心情に配慮して」との名目で、天安門事件などの戦後史に関する記述を見送った。これは、中国共産党が政府批判を怖れてのことだという。きわめて政治的な配慮だ。

そして、領土に関する教育も、民主党政権は方策を誤った。竹島問題について、民主党の意向を受けて、高校の新学習指導要領(地理A・B)の解説書から記述を削除したのである。これは鳩山総理自身が最終判断したそうだ。日中、日韓関係に「友愛」で臨むことが国益に相反することを、なぜ気づかないのだろう。

逆説的な言い方だが、彼らが確信犯であった方がまだ救われる。これほど常識や戦略眼の欠落した人物が、日本の代表に選ばれたと認めたくないからである。

ちなみに、自国に誇りを持つ割合調査では、調査国中、日本は最下位となり、自虐史観の成果が如実に表れた。鳩山政権は、今後もさらに中韓史観に叩頭し、最下位を維持するのだろうか。

2009年10月2日、英誌エコノミスト(The Economist)が発表した調査結果によると、自国に対する誇りが最も高い国はオーストラリア、最も低い国は日本であることが分かった。世界的に有名なコンサルティングファーム、レピュテーション・インスティチュート(Reputation Institute)が33ヵ国に関して実施した世論調査の中で、調査に応じた人々は、各々自国に対して、信頼に値するか否か(trust)、賞賛に値するか否か(admiration)、尊敬に値するか否か(respect)、そして、誇りを感じられるか否か(pride)の各項目についてその度合を答えるよう求められた。この世論調査結果は指数で表示されている。 (英「エコノミスト」09.9.29)

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